『保育現場からのお願い』 (2023年2月10日記者会見)
- hoikanakyoto
- 2023年3月6日
- 読了時間: 5分
(*京都市庁舎2F記者クラブで話された内容です。) 近年、『保育士不足』『保育士の成り手がいない』と問題になっているのはご存知でしょうか? 私も26年保育士をやっていて、だんだんと保育の制度が悪くなり、保育士が疲弊してきているの を感じています。募集してもなり手がいない、というのはどこの保育園でも同じで、このままでは 保育士不足は解消できないなと感じています。
どのように保育制度が変わってきたのか? 2002年ごろから国の保育制度が変わり、社会福祉に企業が参入しやすくなりました。今までの規制が緩和され、園庭がなくても、給食が外部委託でもオッケーになりました。以前は全てが正規 職員でカウントしていた職員配置も今では正規職員は部署に1人、それ以外は資格があれば非常勤職員でいい、というように変えられて、正規職員の責任が重くなっているように感じます。(責任は正規職員にかかってくるのですが、非常勤職員も子どもの前では同じく先生です。資格を持っているのに時給千円程なのも安すぎるし問題あると思います。保育士が安定して働き続ける事が子どもたちにとっても安心感に繋がると思います。) また、京都市に於いては財政難という理由から公立保育所を次々に民間に移管され、今では行政 区に1箇所ずつしか公立保育所はありません。今まで子育て支援や障がい児保育を積極的にやって きていた公立保育園が少なくなる事で、その機能が縮小されているように思います。
·「京都市の保育補助金カットは13億円!」
今年度から京都市の『行財政改革』で保育の予算が13億カットされる事になり、うちの園でも補助金カットの額は1,500万円になるかもしれないと試算されています。(←なぜなら、今までは昇給財源があったのですが、今回の削減で11年目までしか昇給は認められなくなりました。超過分の人件費は降りてこなくなったのです。長年働いている職員が多いとその職員分の補助金はカットされるからです。)
今でも特別なケアの必要なお子さんには支援の保育士を園の持ち出しでつけている状況です。補助金カットされると困難を抱える子どもたちは予算のない中で、これまで以上に締め出されていくのではないかと心配になります。今でも余裕のある人員配置ができず、配置基準ギリギリの職員しかいない中、掃除や消毒にも人手をさかれるので、そこに人手を回すと0歳児でもたくさんの子どもたちを一人で見ている時間も 出てきます。午前と午後で人が変わったり、主任や園長も保育に入ったり、保育士資格のない学生さんを保育補助として入ってもらってなんとか現場を回している日もあります。
保育の仕事は子どもの命を守り育てる責任の重い仕事なのに、それに対して決して高くはない賃金です。それなのに、補助金削減でボーナスカットや昇給ストップされている園もあります。さらに賃金が下がる、と思うと、やる気も下がりますし、『長年働いてはいけない』と言われているようにも感じてしまいます。園に割り振られたポイントを多くとってしまう私のようなベテラン保育士は、肩身の狭い想いをしてしまいます。
京都市に補助金カットでは園経営が成り立たないと意見をしても『人件費を削らないように、マネージメントせよ』と冷たい対応です。 実は去年あれだけ『500億円の赤字で京都市は財政破綻する』と騒いでおきながら、実際は4億円の黒字だったとの事。それなら13億の削減をせずに元の補助金を配布してくれたらいいやん!と保育士仲間は怒っています。その事で京都市に陳情書を書いたり、議員さんに現場の状況をお伝えしたり、なんとかしようと保育士の仲間で動いています。
·「保育士が元気じゃないと子どもも元気に遊べない! 」
保育士の仕事はただ子どもを預かるだけ、と思われているのかと悲しくなる時があります。昨今のバスの置き去りや散歩先での事故などがあると、子どもたちを預かる責任を強く感じて恐ろしくなります。そのような事故のないように、私たちは日々安全に気を配りながら、一人一人に寄り 添って子どもが主体的に生活したり遊べたりできるよう、細かい配慮をしながら仕事していま す。仕事中は一瞬でも気を抜けないし、常に子どもたちの行動を把握しておかないといけない仕 事です。そして、保育の準備や記録、保護者対応など、勤務時間外にたくさんやる事もあるので、 自分の時間を犠牲にしているとどこかで気持ちにも身体にも負担になりしんどさも感じます。けれど、やっぱりこの仕事は子どもたちと日々を創り合う仕事。楽しいことや感動することもたくさんあるのです。だから私たちは日々、もっと良い保育をしたい!と実践を振り返ったり、研修で学んだりしています。 保育士の人手不足を解消するには、その専門職に見合った賃金がある事や、余裕のある人員配置 で子どもたちと余裕を持って関われる事が必要だと思います。保育士が健康で笑って保育する事 で、子どもたちも安心して自分らしく成長していけると思います。
国や自治体の責任の元でどの子も等しく保育を受けられるよう、どんな子でも大切に保育ができるように、保育士を増やす政策に転換してもらえる事を期待しています。
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